2022年11月10日
円安です。塩漬けだったドル建て金融商品をどうしますか?
10月21日に1ドル=151円90銭まで下落後、政府・日銀は9月22日に引き続き、2回目のドル売り・円買いの為替介入をしました。10月24日以降もドル円相場が4円ほど変動する場面が数回見られ、不安定な動きが続いています。
図表の為替レートの推移で、1987年から1990年にかけてドル建て金融商品に投資された方は現在の円安で為替差損がなくなってきているか、少なくなっています。すでに損切りの対応をしている方も多いかも知れませんが、じっと耐えてきた投資家の方もいるのではないでしょうか。
さて、どう対応するかですが、定石では3通りの考え方があります。
1.直ぐに円資産に転換する。
2.持続する。
3.更にドル建て金融資産を買い増しする。
いずれにしても今後のドル/円の為替相場についてどのような見通しを持つかによって対応が違ってきます。
現在の円安が加速している主な要因は米金利上昇に伴う日米金利差の拡大によるものです。その動きが緩やかになれば、円安の圧力は軽くなります。マーケット関係者は米連邦公開市場委員会(FOMC)の追加利上げの動きに注目と言っています。11月1~2日に開催されたFOMCは政策金利を0.75%引き上げると決定しました。FOMC終了後の記者会見で米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は「金融政策の効果が完全に浸透するには、特にインフレに対しては時間を要する。従って、声明では将来の利上げペースを決めるにあたり、累積的な金融引き締めと、金融政策が経済活動やインフレに時間差で影響を与えることを考慮すると述べた。」とし、インフレ抑制には「まだ道半ば」と強調しました。12月のFOMCでの利上げ幅が0.75%になるか0.5%になるかで今後の動向が占えるようです。利上げペースが落ちたとしてもマーケットの予想よりも長引き、ターミナルレート(利上げの到達点)が5%を超える可能性もありそうです。
市場関係者の年内の見通しは以下の予想が多いようです。
(日経ヴェリタス10月23日第736号より主旨要約)
1.「155円近辺から140円前半の動き」(井野鉄兵・三菱UFJ銀行チ-フアナリスト)
円相場と連動性の高い米2年金利が5%に近づく場面では、円は年内に155円近くまで下落余地がある。もっとも、年末にはドル高基調が反転している可能性がある。米国の個人消費の低調さが鮮明になれば、米金利の低下圧力がかかり、円相場は年末の時点で140円前半まで値を戻すと考えている。
2.「下値余地は足元の水準(150円前後)から2~3円程度」(野地慎・SMBC日興証券チーフ為替・外債ストラテジスト)
円安・ドル高の基調転換は米金利の動向次第で、米金利の上昇はそう長くは続かないだろう。
ドル高がピークアウトした後は戻りも早いとみる。
3.「現在の円安・ドル高は原油価格の高止まりの影響が大きい」(高島修・シティグループ証券チーフFXストラテジスト)
ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとした資源価格の上昇で、日本や欧州、英国が貿易赤字を抱えていることがドル高の底流にある。今後原油価格がさらに下がり、米金利が低下すれば円安・ドル高も止まると予想する。
日本の政府・日銀の為替介入にも注意が必要です。財務省が10月31日に発表した9月29日~10月27日の為替介入実績は6兆3499億円に達します。為替市場では、150円前後になると介入がされているのではないかと思われます。日米金利差や貿易赤字などの構造要因が背景ある中、どこまで介入の効果が続くか判りませんが、当局の意志は感じられます。
このようなマーケットの状態でどう対応するかですが、円に換金、持続、買い増しいずれも各投資家個人の判断によります。ただ、株式相場の格言に「売り買いは腹八分」
「天井を売らず底を買わず」があります。最高値で売ろうとか最安値で買おうと思うな、天井では売れず、底では買えぬとの意味です。為替の動向、先々の為替はコンピューターでも正確な値は出ません。損失が少ないのであれば撤退するのも一手です。
今はあまり流通していませんが、トラベラーズチェックをお持ちの方も円に換金のチャンスかもしれません。
アメリカンエキスプレスのトラベラーズチェックをお持ちの方はアメリカンエキスプレスに問い合わせすると国内の為替両替店を紹介してくれます。為替手数料、換金手数料は取られます。また、本人確認書類が必要です。
シティバンク(シティコープ)のトラベラーズチェックをお持ちの方は国内ではSMBC信託銀行PRESTIAの店舗に行けば為替手数料は取られますが、換金手数料は取られません。また、本人確認書類が必要です。
本コラムの内容は筆者個人の見解です。保証するものではありません。投資判断にあたっては投資家ご自身の自己責任で行って下さい。
金井剛 2022年11月10日
金井 剛 2022年11月10日