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家庭経済の耳より情報

2024年12月25日

政治的混乱が経済に与える影響を回避する為のFPからの提言

2024年冬、世界的に政治不安が高まってきています。

 韓国では、尹錫悦大統領が突然戒厳令を出し、国内外で大きな不安を引き起こしました。
この混乱により、韓国では政治的な不安定さが為替や株価の下落を招き、経済への信頼を損なうことが懸念されています。ウォン安は、輸入品の価格上昇を通じて物価全体の上昇を引き起こす可能性に繋がります。また、投資心理の悪化から外国投資家が韓国市場から撤退し、韓国株式市場や債券市場が短期的に大きく下落する恐れも懸念されます。

 フランスでは、マクロン大統領が議会を解散して選挙を行いましたが、その結果、右派、中道、左派の三つの勢力が対立。予算が決まらない事態に陥り、政治は非常に不安定な状態になっています。そして12月4日、ミシェル・バルニエ首相に対する不信任案が可決されました。このような信任投票でフランス政府が崩壊するのは、実に60年ぶりのことです。
特に、2つの業態に影響を与えています。一つ目は観光業で,観光客の減少が続き、観光に結びついているサービス業にも影響が及んでいます。二つ目は自動車産業で,投資の減少が生産に悪影響を及ぼし、業界全体の収益に打撃を与えています。今後はフランス国民全体の消費の落ち込みも予想されます。

 ドイツでも、ショルツ首相が率いる連立政権が経済政策の違いをめぐって崩壊しました。
フランスとドイツはEU経済の中心であり、両国の不安定化はEU全体の経済に悪影響を与えています。今後EU全体に波及する懸念材料が2つあります。一つ目は、経済の鈍化で,投資家心理が悪化し、EU内での消費や投資が停滞する可能性があります。二つ目は、ユーロの価値低下です。政治的不安がユーロ圏全体の信頼を損ない、ユーロ安につながる可能性があります。これにより輸入品が高騰し、エネルギー価格などが上昇するリスクが生じます。

 日本でも、10月27日に行われました衆議院議員選挙で与党である自民党と公明党が過半数を失いました。これにより与党だけで法案や予算案を成立させることができない状態に陥っただけではなく、野党が内閣不信任決議案を国会提出すれば賛成多数となる公算が高くなり、政権運営は不安定になりやすい状態になりました。

 アメリカでも、11月5日の大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が再び大統領に選ばれ、議会でも共和党が上院・下院の支配権を握り、政治的に大きな変化が起きています。トランプ氏の再選によって減税や規制緩和が進むことが予想され、特にエネルギー政策では石油やガス産業の規制が緩和され、これらの産業が活発化する可能性があります。一方、中国60%、その他の国10~20%という追加関税政策を掲げており、議会の承認なしに大統領令だけで実施できる政策として実行されると、世界経済に大変大きな影響を及ぼすことが予想されます。特に物価高騰は、アメリカ内外共に避けられない事態に陥ります。

 このような政治的不安が募る時代、ファイナンシャルプランナーとして3つの提言を行いたいと思います。

1.現金など安全資産の確保
政情不安時には市場が大きく揺れる可能性が高まります。不測の事態に備えて十分な安全資産を持つことをお勧めします。

2.分散投資
政治的リスクの影響を最小化するため、資産を一極集中させるのではなく分散することが有効です。特に安定した経済圏への投資を検討するべきと考えます。

3.長期的視点を持つ
短期的な市場変動に左右されず、長期的な資産形成を目指すことで安定を図ります。

 資産形成に対する考え方として、日頃からファイナンシャルプランナーが唱えている「長期・分散投資」が今、求められています。

滝田 知一 2024年12月25日