資産を運用する

家庭経済の耳より情報

2015年02月10日

投資信託の長期保有を考える

 一般の個人投資家が短期間に株式や投資信託の売買を繰り返すことは、証券会社や銀行に支払う売買手数料がかさむだけで、有効な投資方法とは言えず、長期保有することが望ましいとよく言われます。しかし、投資環境が変化しても、無条件に株式や投資信託を保有し続けることが有効な投資方法と言えるでしょうか?

私は一般の個人投資家は、株式や投資信託を無条件に長期保有することを目的にするのではなく、長期的な見通しに立って運用することが重要だと考えています。長期的な見通しが変化した際、又は長期的な見通しに変化がなくても、株式や投資信託の価格が大幅に変化した際には、株式や投資信託の保有をどうするのかを検討するべきだと思います。このような観点から、投資信託の長期保有について考えてみます。

皆さんは投資信託を購入する際に、どこに着目するでしょうか?

 投資信託の投資対象となっている市場や資産の長期的な動向を左右する経済や企業のファンダメンタルズ(経済成長、インフレ、企業の利益成長等々)に着目する場合が多いのではないでしょうか。このようなファンダメンタルズの長期的な見通しに立った投資は、一般の個人投資家にとって、有効な投資方法の一つだと思います。

しかしながら、経済や企業のファンダメンタルズの長期的な見通しは未来永劫不変ではなく、時間の経過とともに変化していきます。例えば、かつては高い経済成長率を誇り、有望な投資先として人気のあったBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)をはじめとする新興国の中にも、今や経済成長率が大幅に低下し、株式市場が低迷している国がいくつか見受けられます。

つまり、長期的な見通しは変化するということです。また、ファンダメンタルズの長期的な見通しが不変でも、投資信託が対象とする市場や資産の価格は常に変動します。従いまして、投資信託を保有している限り、投資対象となっている市場や資産の状況を常に注意深く見守っていかなければなりません。往々にして、一旦投資信託を購入してしまうと関心が薄まる傾向があると思われますので、ご注意いただきたいと思います。

では、どのように運用すれば良いのでしょうか?

 長期的な見通しに大きな変化がないにもかかわらず、何らかの要因で市場や資産の価格が大きく下落し、それに伴い投資信託の価格が下落した場合、購入時に比べ投資信託の価格が割安になったということですから、追加投資(ナンピン)を行い、保有量(口数)を増やすことを検討してください。逆に、市場や資産が大きく上昇し、それに伴い、投資信託の価格が上昇した場合、購入時と比べ投資信託の価格が割高になったのですから、一部売却(一部利食い)を行い、保有量を減らすことを検討します。これを繰り返すわけです。
投資信託は小口の売買が可能な商品なので、このような運用を小規模でも行うことができます。

ただし、小さい変動幅で売買を繰り返してしまうと、売買手数料が増え、効果が打ち消されてしまいますので、注意が必要です。また、高分配型の投資信託は市場や資産の価格変化を投資信託の分配に反映している部分が大きいので、投資信託の価格である基準価額の変化幅に、受け取った分配金額を加えたトータルリターンを基準に、購入時の価格と比べて割安・割高を判断する必要があります。

また、ファンダメンタルズ等の長期的な見通しが大きく変化した場合は、その時の投資信託の価格への反映状況も考慮に入れながら、保有量を検討すべきです。特に、ファンダメンタルズが大きく悪化した場合は、原則として全額売却を検討すべきでしょう。
このように、保有している投資信託を放置することなく、しっかりとフォローし、状況の変化に対応して行動していくことが、投資信託を長期保有する上で、重要なことになります。

しかしながら、実際に一般の個人投資家が、自分自身でこのような運用方法を実践することは容易ではありません。ファイナンシャルプランナーなどの金融の専門家のアドバイスを受けながら、運用することをお勧めしますが、まずは自分で保有している投資信託のパフォーマンス(運用成果)を正確に計測することからスタートしてください。

幸いなことに、去年の12月から販売会社のサービスの一環としてトータルリターン通知制度というものが始まっています。今まで、分配金の受け取りや一部解約や追加投資によって、自分が投資している投資信託の損得が、わかりにくかったのが、このトータルリターン通知制度によって明確になりました。トータルリターン通知制度のサービス内容は販売会社によって少し異なりますので、詳細は販売会社にお問い合わせください。

ここで述べた投資信託の長期保有の方法について、詳しくお知りになりたい方は、神奈川県FP協同組合 金融商品仲介事業部まで、お気軽にご連絡ください。

岸上 和夫  2015年02月10日