2018年04月30日
株式市場10年周期大変動は起こるか
昨年、株式市場で一部アナリストやストラテジストから「10年周期大変動説」が囁かれましたが、幸いにも昨年末は世界の株価は上昇相場で終わりました。
しかし、10年前の2008年にはサブプライム問題から米国ではリーマン・ブラザーズが経営破綻し、メリルリンチは救済買収されています。
今年はどうなるのでしょうか。
過去30年間の10年周期前後の大変動の事例を見てみましょう。
2007年~2008年はサブプライム問題から日経平均株価は1万8000円台から日中7000円割れまで下落し、一時戻しましたが2009年3月10日終値は26年ぶり安値の7,054円を付けました。また、2008年7月にはWTI原油価格が147.27ドルと最高値となりました。
1997年7月にはジョージ・ソロス氏が仕掛けたアジア通貨危機が発生し、NYダウは8月高値から10月まで1,098ドル下落、日経平均は6月高値から12月末まで5,904円の急落でした。この年、北海道拓殖銀行、山一證券、三洋証券が破綻しています。翌1998年10月には日本長期信用銀行、12月に日本債券信用銀行の特別公的管理が決まり、国有化されています。
1985年から1989年を見てみると1985年9月にプラザ合意(ニューヨークのプラザホテルに米国の呼びかけで、日米英独仏の先進5か国の財務相・中央銀行総裁が集まり、ドル安に向けて外国為替市場で協調介入を行うことを合意)があり、日銀は円高不況を避けるため低金利政策を続行し、株式市場に大量の資金が流れ込みました。80年代後半の空前のバブル相場の始まりです。1987年10月には世界同時株安のブッラクマンデー(暗黒の月曜日と呼ばれ、10月19日(月)にNYダウは1日の取引で終値が前週末より508ドル下落し、下落率では世界恐慌を引き起こした1929年10月24日のブッラクサーズデーの12.8%を上回り、22.6%となりました。)が起こり、世界の株式市場に波及しました。
大暴落の要因の一つは、コンピューターの普及と高度な金融工学による先物を利用した大規模な株式ポートフォリオに保険を提供する手法によるものと考えられています。
ポートフォリオの価値が市場を大きく上回っている時には先物売りは少ないが、市場が下落し始めると売りを増やし、損失と先物売りの利益をほぼ同じようにする仕組みで、市場が下落し始めるとコンピューターが自動的に売り注文を出し、売りが売りを呼ぶ負の連鎖を引き起こしたと言われています。再発防止策としてサーキットブレーカー制度などが導入されました。
さて、今年の市場のリスク要因の一つは地政学リスクといわれています。
米国第一主義を唱えるトランプ大統領の動向です。世界を取り巻くポピュリズム台頭で、世界の政治環境が変わり始め世界経済に大きく影響し始めているようです。とりわけ、トランプ大統領の反グローバリズム的な外交政策は中国、ロシア、中東、北朝鮮と予測を超えたリスク要因となってきています。
ただ、トランプ大統領の政策は分かり易いと考えられます。中間選挙を控え、米国全体でなく、コアの支持者層に絞った政策を次々に打ち出しています。彼の支持層はホワイト・ワーキング・クラスと呼ばれる白人労働者層と米国政治の主流を占める共和党の党員といわれています。
この層の支持がトランプ大統領にとって一番重要なことです。
ここで気をつけておかなければならないのが、米国の政治制度です。世論調査と選挙の結果は大きく異なることがあります。米国には住民票がないので、投票しようとする市民は事前に有権者登録をしなければ投票できません。自発的に選挙に参加する意思が必要です。ワシントンポストによれば1月の時点では党派別支持率では、民主党31%、共和党23%でした。
しかし選挙において投票率が高い傾向があるのは白人、高所得者、高学歴、高齢の人たちといわれています。低い傾向にあるのは低所得者、ヒスパニック、低学歴、若年層といわれています。
共和党の支持者は前者に多いようです。
このように考えると、トランプ大統領は世論に反して以外に長持ちしそうです。
しばらくの間、トランプ大統領の政策に影響される相場展開になるかもしれません。
大変動に備えておくことも必要と考えられます。
金井 剛 2018年04月30日