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家庭経済の耳より情報

2019年11月25日

投資信託の積立にはどのような方法があるのでしょう、またその特徴は?

 一般的に、投資信託の積立というと、まず思い浮かべるのが、投資信託を定期的に同金額積み立てる方法です。これはドルコスト平均法と呼ばれる積立方法になります。証券会社等に投資信託の積立を申し込む場合は、この方法になります。

ここでは、いくつかの積立方法を紹介しながら、最も採用されているドルコスト平均法の特徴についてお話ししたいと思います。

 まず、積立とは、資産形成を行うにあたり、どのような意味を持つのでしょうか?
株式や投資信託は価格が常に変動しているため、投資するタイミングによって取得価格が異なってきます。一度に投資して安く購入できればベストですが、高く購入してしまうリスクもあるわけです。この一度に高く購入するリスクを避けるために、投資のタイミングを分散化することによって、購入価格を平準化する、これが積立投資の狙いです。

投資タイミングを分散化する方法としては、相場の判断を入れて投資タイミングの分散を決める方法と、相場の判断を入れずに一定の方式で機械的に積み立てていく方法があります。ここでお話しする積立方法は後者にあたります。

 まず、ドルコスト平均法について、お話しします。
ドルコスト平均法の特徴を説明するために、一定の金額の代わりに一定の数量(投信の場合は口数、株式の場合株数)を定期的に購入する方法(以降CS法と呼びます。Constant share purchase strategy)と比較していきます。

ドルコスト平均法は、相場が上昇し投資信託の価格が高くなると、購入金額が一定なので、購入する数量(口数)が少なくなり、逆に相場が下落すると投資信託の価格が下がるので購入する数量(口数)が増えます。したがって、投資信託の保有口数の取得価格は、投信の価格に関係なく一定の数量(口数)を購入するCS法に比べ、安くなります。
また、このドルコスト平均法が一番有効に働くのは、相場が大きく上下に変動しながら相場の水準が横ばい(フラット)で推移した場合になります。

例を使って説明してみます。下記の表は、投資信託の基準価額(10,000口数当たりの投資信託の価格)が10,000円⇒9,000円⇒11,000円⇒10,000円と推移し、ドルコスト平均法で、毎回100,000円の、CS法で毎回100,000口数の投資信託を購入した場合を示しています。

ドルコスト平均法では購入回数4回で合計400,000円投資し、402,020口数を保有していますので、10,000口数当たりの保有コストが9,950円になります。
他方、一定の口数を購入するCS法では、同じく合計400,000円投資し、400,000口数を保有することになるので、10,000口数当たりの保有コストが10,000円となります。このように、投資信託の価格が上下し、もとの価格水準に戻る場合は、ドルコスト平均法が有利な積立方法になります。

 株式市場では、相場が一方的に上昇、又は下降が続くケースは少なく、相場が上下に振れても長期的なトレンドに戻る傾向(mean reversion)があると言われています。したがって、株式市場を投資対象とする投資信託の積立方法としてドルコスト平均法は相性が良いと言えます。

 しかしながら、米国株式市場のように、短期的には上下に変動しながらも長期的には上昇トレンドを続ける市場では、投資信託の価格水準も切り上がっていきます。このような状況下で定額投資を長期間続けると、購入する数量(口数)が減ってしまい、一定の数量(口数)を定期的に購入するCS法に比べて、保有する投資信託残高が少なくなり、市場の成長を十分に享受できない恐れが生じてしまいます。

したがって、長期にわたりドルコスト平均法で積立投資する場合、株式市場の長期的な成長を十分に享受するためには、積立投資する金額を増額していく工夫が必要になると思われます。

 ドルコスト平均法の特徴をさらに際立たせた積立方法としてバリュー平均法があります。ここでは詳細な説明は省きますが、積立残高が時価ベースで一定額が増えるように、購入する金額を調整しながら定期的に購入する方法です。

例えば、資産を時価ベースで100,000円ずつ増えていくように積み立てていくとします。2回目の投資の際に、初回に投資した時期から市場が上昇し、1割資産が増加したとします。
初回の資産は110,000万円になっているので、2回目の資産額を200,000万円にするためには、2回目に90,000円を投資するだけで良いことになります。つまり、バリュー平均法は、ドルコスト平均法と既に積み上がっている資産のリバランスを結合したものといえます。ドルコスト平均法の逆張りの特徴をさらに高めた手法ということですね。

 最後に、バリュー平均法や一定量を定期的に購入するCS法は、通常証券会社では取り扱っていませんので、これらの方法を行うためには、自分でプランを立て、定期的に証券会社等に発注しなければなりません。
また、証券会社等で取り扱う投資信託の積立投資はドルコスト平均法の定額投資になりますので、ここでお話しした特徴を参考にしていただきながら、積立投資を考えていただければ幸いです。

岸上 和夫 2019年11月25日