2022年01月25日
資産運用の種類と選び方
「人生100年時代」「老後2000万円問題」「資産運用」という言葉は当たり前のようによく聞くようになりましたが、実際どのように資産を増やしていけば良いのか?など疑問は多くあると思います。
経済の落ち込みにより将来の為にと投資を始める人は年々増えています。また、よく言われる貯金だけのリスクにインフレリスクと円安リスクがあります。そういった事への対処の為や余計な支出を減らす為にも資産運用は効果があるのではないでしょうか。
老後2000万円問題という言葉は2017年の平均の実収入と実支出を元にその不足分から算出していますが、2020年の家計調査を基に同じ計算をすると老後30年間で55万円しか不足しないという結果になり、あまり2000万円という数字に根拠がないようにも思えます。もちろんその方の支出額にもよるので一概にどうとは言えません。(2020年は給付金を得た世帯が多かったこと、さらに旅費や食費などの支出は減ったという世帯も多かったという要因もありました。)
しかしながら、人生100年時代と言われるように人間の食べ物がよくなった事など様々な要因により平均寿命は伸び続けています。65歳以上の男性の4人に1人は90歳を超え、65歳以上の女性の4人に1人が95歳を超えています。昨今は、飲食店などに行っても高齢の方が働いている事は全然珍しい事ではなくなっています。このように高齢まで働いて給料を得ていければお金の問題は発生しづらいかと思います。大事なポイントは、資産運用もしながら給料も得つつ、副業も解禁されているならば休日に副業をしたりして手取りを増やしつつも支出を減らすなど一人一人の金融リテラシーを高めることでもあるかと思います。また調査資料によると日本人のファイナンシャルリテラシーがあるとジャッジされた人の割合は先進国と比べて高くないというデータもあります。日本人43%、スウェーデン71%、ノルウェー71%、英国67%、オランダ66%、アメリカ57%、シンガポール59%。(2015年アメリカのスタンダード&プアーズ社の調査した資料による)
また成人年齢も20歳から18歳に変更になる事での金銭的トラブル防止のためにも、金融リテラシーの重要性がより一層高まってきています。
そのような中で、資産運用について少し記載できればと思います。資産運用は自分で勉強をしないと難しいタイプと、忙しくて自分で情報収集している時間はない人向けのタイプと大きく2つの種類があると思います。
今回は、前者と後者の内の1種類ずつ記載します。読者の方には自分にはどちらのタイプが向いているのかの判断材料にしていただければと思います。
まず、自分で勉強していく必要性の高いタイプですが、不動産投資があります。
もちろん専門家に相談することも重要ですし、営業担当者の話を聞く事も重要です。ですが、専門用語も多いため、初めて聞いてすぐに理解して良い判断をすることは難しいと思いますので、しっかりご自身で投資対象物件の健全性などを計算できるようにしておく事は重要かと思われます。その為に最低でも知っておくべき主な専門用語を簡略化して記載します。
・LTV(Loan To Value)「総資産有利子負債比率」物件価格のうちのローン額の割合を示したもの。計算式は、ローン額÷物件価格。一般的にはLTVは80%以下が理想的である。
・ROI(Return On Investment)「投資利益率」投資した資本からどの程度の割合で利益を得ているかを表す指標。計算式は、年間収益÷自己投資額×100 ROIが高ければ自己資本の回収に要する期間が短くなり、次の投資にも早く移る事が可能。また、ROIは融資によるレバレッジ効果の指標となる。だたし融資レバレッジがよくても、融資額が多いと金利が上がってしまった際のダメージや空室が多くなった場合にはローン返済が厳しくなったりするので、この数値だけで判断するのはよくない。
・CCR(Cash On Cash)「自己資金収益率」 自己資金の投資分の回収を予測することができる。計算式は、年間収益÷自己資金×100 ROIとの違いは、借入金を含めないで計算する点。
・DCR(Debt Coverage Ratio)借入返済余裕率。ローン返済の安全性の指標。計算式は、純利益÷年間返済額。この数値は大きいほど安全性は高い。
・NPV(Net Present Value)正味現在価値を意味し、投資計画の現時点での価値を推し量るのに利用される。
・IRR(Internal Rate of Return)内部収益率。運用期間中における全体的な利回りを算出できる。
・割引率 将来のお金の価値を現在の価値に換算する(割り引く)ときの利率(年率)。
・売却運用率 数年後の売却運用率分が今、物件を売却することでその分だけ得をするという倍数の計算。 計算式は、現在の売却金額÷(X年後の売却金額+X年後までの実質収支)。
・リスクパーセンテージ 物件をそのまま所有し続けた場合のリスク計算。計算式は、(ランニングコスト+年間返済額)÷家賃×100(年間)。60%~80%が望ましい。
・DCF法 不動産の収益価格の算出方法の一つ。直接還元法よりも正確な分析が可能。
・直接還元法 不動産の収益価格の算出方法の一つ。 計算式は、収益価格=一期間の純収益÷利回り。
・GPI(Gross Potential Income)満室時年間家賃収入。
・表面利回り(グロス利回り) 投資物件の収益率を示す。計算式は、GPI÷物件価格×100。空室なし想定での利回り。
・EGI(Effective Gross Income) 実効総収入。 計算式は、GPI-(賃料差異+空室損失など)
・OPEX(OperatingExpense) 賃貸運営経費。
・NOI(Net Operating Income)実質収益。計算式は、EGI-OPEX。
・ADS(Annual Dept Service) 年間返済額。
・BTCF(Before Tax Cash Flow) 税引き前キャッシュフロー。計算式は、NOI-ADS。
・ATCF(After Tax Cash Flow) 税引き後キャッシュフロー。計算式は、BTCF-TAX。
・NCF(Net Cash Flow) 計算式は、NOI-資本的な支出(修繕費・改良費など)。
・PB(Pay Back Period) 資金回収期間 計算式は、投下した自己資金÷キャッシュフロー。PBが短ければ短いほど、優秀で効率的な投資である。
・BER(Break Even Ratio) 損益分岐点。計算式は、(OPEX+ADS)÷GPI×100。
・NOI利回り(実質利回りやネット利回りともいう) 表面利回りよりも、より正確に実態を表した収益性の指標。計算式は、NOI÷物件価格×100。
・FCR(Free & Clearly Return) 総収益率 NOI利回りよりも、さらに正確に実態を表した収益性の指標。計算式は、NOI÷(物件価格+諸経費)×100。
・ローン定数(K%) 金利と返済期間で決まる指標。 計算式は、銀行への年間返済額÷借入金額(残高)×100。 総借入額に対し、年間どのくらいの割合で返済しているかを示したもの。
・イールドギャップ FCRとローン定数の差。計算式は、FCR-ローン定数。この数値は大きいほど望ましい。
次に、自分でそこまで勉強したりする必要性は高くないタイプです。これには国の制度で勧めている、つみたてNISAという制度があります。最長20年間非課税で運用でき、かつ金融庁が定めた一定の条件を満たした安全性の比較的高い190本程度の投資信託などに厳選されているので自分で数多くある投資信託から選ぶよりも情報収集に時間もかからないと考えられます。リスクが低いとリターンも低いのが当然ですが、長期・積み立て・分散という仕組みにより、十数年後には元本を多く増やせる可能性もある制度です。
貯金だけで老後2000万円問題に対応する為には、35歳から65歳までの30年間毎月55,500円程度の積み立てをしなければなりませんが、毎年つみたてNISAにて限度額40万円(月33,333円)を運用利回り4%で20年間、非課税期間の20年経過後は一般の積立で運用利回り3.2%(税金が20%引かれるため利率が8割にダウンと想定)で運用したと仮定すると、30年後には約2100万の資産形成になります。運用利回り年利4%とは金融庁のパンフレットには年利2%~8%に収まると記載があるため現実的な数字です。このように普通に貯金していくよりも、つみたてNISAなどの非課税制度を活用して運用した方が資産を増やせる可能性は高まります。つみたてNISAは他の投資信託と同様に元本保証ではありませんが、運用成果を長期間で見れば貯蓄に比べて数十万円から数百万円の資産の違いが出ることもあるので、運用しないことは機会損失のリスクであるとも言えます。
今回記載した以外にもたくさんの資産運用方法はあります。そして、2022年はiDeCo(個人型確定拠出年金)の加入可能年齢が一定条件を満たせば、60歳未満から65歳未満までに上がる改正があったりDC(企業型確定拠出年金)との併用も容易になることもあり、資産運用に注目する方はより増えると予想されます。自分の場合はどのくらいの金額を運用に回せるのか、また情報収集や勉強にどれだけ時間を使えるかを考え一人一人に合った方法を見つけていく事が重要だと思います。自分に合ったタイプを探しつつファイナンシャルプランナーなど専門家に詳しい事は相談するのがよいでしょう。
何から始めるべきかなかなか決まらない場合は、毎月少額からつみたてNISAをスタートしてみてはいかがでしょうか。
高橋 徹夫 2022年01月25日