2023年10月10日
自筆証書遺言書の法務局保管制度を活用しましょう
法務局における自筆証書遺言書保管制度(2020年7月10日開始)が始まり、手書きの遺言書を預けることができるようになりました。自筆証書遺言書のメリットは損なわず、問題点を解消するための保管制度です。具体的には、遺言者本人の死亡後、相続人等に発見されない、一部の相続人等により改ざんされる等の恐れがあることです。主に遺言書作成後の管理に起因するトラブル解消の有効な手段となっています。家庭裁判所での検認も不要で、また希望により、遺言書保管所において、遺言者の死亡の事実が確認できた時に、遺言書が遺言書保管所に保管されている旨のお知らせが届きます。費用も保管期間に限らず、一律保管申請料3,900円と安くなっています。また、保管に当たっては証人や立ち会いも不要で本人が申請すれば良いのです。2023年6月末までの3年間累計で55,801件の自筆証書遺言書が法務局に預けられています。今後、法務局保管制度がますます活用されると見込まれます。
一方、自筆証書遺言書の法務局保管制度を活用するにはいくつかの留意点があります。
・本人が法務局に行く必要があります。
家族などの代理人が行くことは認められません。
・写真付きの本人確認証明書が必要です。
運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、マイナンバーなど顔写真付の本人確認書類を持参することが求められています。
・遺言書の様式等に定めがあります。
用紙はA4サイズ、余白は左辺に20ミリ以上、下辺に10ミリ以上、上辺に5ミリ以上、右辺に5ミリ以上確保することになっています。
・内容の確認はしてもらえません。
自筆、日付、捺印などの形式要件は確認してもらえますが、遺言書の内容の相談、確認はしてもらえません。
・本制度は、すべての手続きにおいて予約が必要です。
予約は専用HPから、法務局へ電話、法務局窓口からとなります。
以上の留意点に対応すれば、自筆証書遺言の法務局保管制度には優れている点がたくさんあります。
・費用が安い
・遺言書の紛失を防ぐことができます
・遺言書の偽造や変造、隠匿を防ぐことができます
・遺言書作成と保管に証人・立会いが不要です
・家庭裁判所の検認が不要です
・死亡時の通知制度があります
公正証書遺言書に比較しても、費用、証人・立ち会い、死亡時の通知制度で優位です。自筆証書遺言書を作成して法務局保管を活用しましょう。遺言書を作成して安心した老後生活を楽しみましょう。また、家族の絆を深めて幸せをつかみましょう。
田邊 勝彦 2023年10月10日