相続を考える

家庭経済の耳より情報

2019年04月10日

葬儀費用に亡くなった人の預金一部引き出し可能に・・・

 以前の耳より情報でもご案内の通り、2018年7月6日、相続に関する民法等の規定を改正する法律が成立しました。
その改正のなかで、今回は「遺産分割前の預貯金債権の仮払いを認める改正」に関して解説したいと思います。


現行制度での問題点とは・・

平成28年12月19日最高裁大法廷決定により、

① 相続された預貯金債権は遺産分割の対象財産に含まれることとなり、
② 共同相続人による単独での払戻しができない、

こととされました。

 このため、故人の口座が凍結され、銀行に行っても葬儀費用や入院費用の支払いなど出費が重なる時でも、遺産分割が終了してないと故人の預金の払い戻しが出来ませんでした。


 これらの問題解決のために、遺産分割における公平性を図りつつ、相続人の資金需要に対応できるよう、2つの制度を設けることとなりました。(2019年7月1日に施行)


(1)預貯金債権の一定割合(金額による上限あり)については、家庭裁判所の判断を経なくても金融機関の窓口における支払いを受けられるようにする。

遺産に属する預貯金債権のうち,一定額については,単独での払戻しを認めるようにする。

 (相続開始時の預貯金債権の額(口座基準))×1/3×(当該払戻しを行う共同相続人の法定相続分)=単独で払戻しをすることができる額

ただし、金融機関ごとに150万円が限度額

(例) 預金600万円→相続人が子供2人(長男、次男)の場合
長男は600万×1/3×1/2(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)なので100万円までは単独で払戻し可となります。


(2)預貯金債権に限り、家庭裁判所の仮分割の仮処分の要件を緩和する。


2つの制度がありますが、(2)の方法は家庭裁判所が介入するため、緩和されたとしても相続人にとっては大きな負担ですので、(1)がより多く利用されるのではないかと思います。

磯野 正美 2019年04月10日