相続を考える

家庭経済の耳より情報

2021年04月10日

タンス預金の贈与は危険?

 タンス預金が毎年増え続け、先月(3月)のニュースでは、ついに日本全体のタンス預金が100兆を超えたという報道もありました。
少しでも、相続時の財産を減らすために、毎年子供などに贈与税がかからない110万円以下で暦年贈与をする人もいらっしゃいます。
このとき、下記のような状況で贈与した側、受けた側が、共にタンス預金としていると、そのタンス預金で不動産などを購入した際に問題になる場合があります。


毎年、お正月に実家に帰り、お土産に親のタンス預金から現金で100万円を貰って帰ります。
自宅に帰っても、銀行に預けず、家の金庫に大事に保管しておきます。

こんなことを5年続け、そろそろ住宅を買おうと思い、その貯まった500万円を頭金にしてマンションを購入し不動産の登記をしました。

そして住み始めてある程度経ったある日、税務署から「お買いになった資産の買入価格などについてのお尋ね」が送られてきました。
これは、不動産購入者全員に送られるものではなく、ある程度無作為に抽出され?送られてくるようです。

なぜ税務署が家を買ったのを把握しているのかというと、不動産登記したことによって、その情報を法務局から受けているのです。
このお尋ねの内容としては、あなたの年齢、職業、所得、住宅の購入価格、登記費用、仲介手数料、そして、支払金額の調達方法などが尋ねられています。

そこで、この人は支払金額の調達方法について、毎年親からの暦年贈与で5年間に渡って100万円づつ贈与を受けたお金500万円と住宅ローンの借入で購入したと回答しました。

毎年100万円なら、贈与税がかからない110万円以下の金額ですから何も問題がないように思えますが、問題ないとわかっているのは本人だけということになります。

税務署は、本人は5年かけて毎年100万円贈与を受けたといっているが、本当は住宅を購入するとき、一括で500万円贈与を受けたのに、贈与税を払っていないのではないか?と疑う訳です。

親から贈与を受ける際に、銀行振り込みなどであれば、親の出金記録、本人の入金記録などから毎年入金されていることを容易に証明出来ますので問題ありませんが、親のタンス預金から子のタンス預金としていては、その証明手段がありません。

暦年贈与については、タンス預金からでなく、銀行の預貯金から振込で行って、記録として残るようにしておいた方が、贈与の実態が明確になり望ましいです。
必須ではありませんが、110万円以下の金額でもちゃんと贈与契約書を作成して、お互いに署名、捺印して保管していれば、その時の贈与の証明になります。

2024年には、新札に切り替わります。新札に切り替わった後に、旧紙幣で高額の買い物とかをすると、店員からアレって思われるかもしれません。それを避けるために、タンス預金にしてあった現金を、まとめて銀行に入金して新紙幣で出金すれば、後で相続などが発生した際に通帳履歴から、突然の大金の入金記録があることが分かります。
これらについてもちゃんと説明出来るようにしておく必要があります。

磯野 正美 2021年04月10日