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家庭経済の耳より情報

2015年08月10日

考えていますか?住宅ローンの借り換え

 日本銀行の強力な金融緩和と金融機関の競争激化を背景に、住宅ローン金利が固定型・変動型ともに空前の低水準にあります。
借り換えで、老後の大きな負担となりかねないローン負担を減らす「最後の好機」とも言われています。
今後の金利の見通しに関しては、まだ世界的不況がある程度は続き、金利も底の状態が続くという見解の専門家が多くいますが、「金利はもうこれより下がらない」という点は変わらずに、上昇タイミングまでの期間で見解が分かれている状況です。借り換えは金利が超低金利の今が狙い目なのと、借り換えは早いほうが総返済額の削減効果が高くなるのです。つまり、底値が続くとわかっていれば早いうちに借り換えをすることが一番のコスト削減なのです。
今回はこの住宅ローンの借り換えについて考えてみます。


Ⅰ.住宅ローン借り換えとは?

 住宅ローンの借り換えとは、既に住宅ローンを借りている方が、今の住居に住み続けることを前提に、現在より有利な条件(金利)の住宅ローンに変更することを指します。
  <例> 10年前に金利2.625%で3000万円を25年で借りた場合
     ※毎月の返済額 136,481円 返済総額 40,944,410円
     金利1.35%の住宅ローンに借り換えをすると
     ※毎月の返済額 124,576円 返済総額 38,801,582円
     削減効果は‐2,142,827円

以上のように約1%の金利の差でも総返済額では200万円以上の差が出て、負担が軽減されます。このように、今借入れしているものよりも有利な金利条件であれば、住宅ローンの借り換えを行って総返済額を減らすことが可能になるのです。

 特に最近は、住宅ローンの超低金利化が起こってきているため、10年前などに住宅ローンを借入した方などは1%以上の金利差がでているケースも多く、借り換えの絶好のタイミングと言えるでしょう。
また、金利水準が高かった頃は借換え前後で「金利差=1%以上」・「残返済期間=10年以上」・「ローン残高=1000万円以上」の3つの条件を満たした場合に削減効果があると言われてましたが、実際には返済期間が長く、ローン残高も多いほど、わずかな金利差でも効果はあるのです。


Ⅱ.住宅ローン借り換えの仕組み

 住宅ローンを新しいものに借り換えたいと思っても、今、借入れしている金融機関で借換えを実行することはできません。他の銀行で、今の住宅ローンの残高を借入し、そのお金をもって、今借入れている住宅ローンを完済することで住宅ローンの借換えが行われます。
住宅ローンの借換えは、新しく住宅ローンを借入れする時と手順はほとんど同じです。ですから、当然審査もあり、年収や健康状態、そして住宅の担保価値などが問われます。
書類も申込み書のほか、年収を証明するものや物件の謄本などを取り揃える必要があります。(ご自身で用意→必要書類・入手先のチェック)
また、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)と銀行ローンなど複数の住宅ローンを借入れしていた場合には、原則、両方合わせて借換えをしなくてはなりません。
どちらか1本だけを借換えすることはできません。

一番大きな注意点としては、住宅ローンを借換えする際に、諸経費がかかります。
これは、新規の住宅ローンの借入の時と同じく、保証料、事務手数料などのほか、抵当権の付け替えも行いますので登記費用も必要となります。一時的にまとまった金額が必要となりますが、この諸費用分も含めて借換えをすることも可能です。諸経費もバカにできない金額になってくるため、借り換えで得られる返済額の削減金額と必要になる諸経費を計算した上で、削減金額が上回った場合にのみ借り換えを実行しましょう。
また、借り換えの際に問題となるのが住宅の担保価値の値下がりです。新規で住宅ローンを借りる際は、その住宅が担保となり、審査が通るわけですが、新規で借入れた時よりも担保価値が値下がりしていると必要な額まで借りられないケースもでてきてしまいます。ただ、金融機関の審査次第で、多少、自宅の担保価値が値下がりしていても審査OKとなるところもあるため、1つや2つの金融機関に断られたとしても、忍耐強く情報収集されることをお勧めします。


Ⅲ.借り換え時の住宅ローンの選び方

 最近では金利タイプの選択肢が多くなり、また繰り上げ返済や疾病保障などサービスも多岐にわたる形になってきたことから、借換えの目的も、変わってきました。
大きく分けると下記の3つです。
① 総返済額を減らしたい
② 金利上昇リスクをなくしたい
③ 現在の返済額を下げたい

どの目的のために住宅ローンの借換えを検討しているのかによって、選ぶべき住宅ローンは変わってきます。現在の返済額を下げた上で総返済額を減らす、ということもできれば、現在の返済額を下げずに、総返済額のみを減らして返済期間を短くするというこもできるのです。
借換えで失敗しないよう、借換え目的の優先順位を明確にしておくことが、第一歩です。借換えの目的を決めたら、次に住宅ローンを選びます。

目的によって次の点に留意して、どの金利タイプの住宅ローンに借換えをするのかを決めましょう。

① 総返済額を減らしたい
この場合は非常にシンプルです。「総返済額を減らしたい」と考える方は、まずは今の住宅ローンと同じ金利タイプで比較し、より金利が低い住宅ローンを探しましょう。
なぜ、同じ金利タイプで比較するのかというと、現在のローンより金利が低くても、例えば、現在全期間固定で、変動金利型へ借換えをした場合、今現在の返済額が下がることは確実でも、変動金利型は半年ごとに金利が見直されます。つまり、金利が下がると思って諸費用を払って借換えたのに、変動金利にしたために5年後には以前の住宅ローンの金利を上回っていたというリスクがあります。今の住宅ローンと単純に比較できません。

② 金利の変動に影響されないものにしたい
今では、固定金利でもかなりの低金利になってきています。現在変動金利を利用している人、2年固定など固定金利選択型を利用している人、ローンの借入期間が10年以上まだ残っている人、余裕資金がない人で今後の金利の変動に影響されたくないという場合には、全期間固定金利型や、今よりも固定期間が長いものが向いています。

③ 現在の毎月の返済額を少しでも抑えたい
現在返済中の住宅ローンよりも金利が低い住宅ローンを探します。このケースでは、今まで固定金利だった人が変動金利に借換えるのもやむを得ません。
ただし、金利の変動の影響を受けやすいものにすると、金利上昇の際には返済額がアップしたり、その結果返済総額が多くなってしまう可能性もあります。
リスクを理解した上でも、直近の毎月の返済額を減らすことを重視する場合は、金利タイプにこだわる必要はありません。

※新規の住宅ローンよりも、借り換えの際は、金融機関ごとの審査基準が大きく異なるため、1つの金融機関だけで審査NGでもあきらめないことが重要です。
※なるべく多くの銀行に仮審査の打診をすることです。さらに複数の支店に打診をしてみましょう。


Ⅳ.後悔しない借り換えの注意点

・短期固定金利の方は、固定期間が終了してからの対応では手遅れに
「5年固定金利なので、固定期間はこのままで安心」と固定期間が終わる頃に金利が上昇していたら、長期固定に切り替えよう、と考えている方がいるのであれば、固定期間が終了した時点では手遅れの可能性もあります。固定期間中に金利が上昇してしまっている可能性があるからです(金利の性質を理解)。
短期固定や、10年固定でも残りの固定期間が短くなってきている人は、金利が低いうちに借換えを検討した方が無難です。
固定金利期間が終了した後も、変動金利や短期固定でつないで行こう、と考えている場合には、固定期間終了後の金利優遇幅を確認しましょう。
特に、当初固定期間の優遇幅が大きく、現在、1%台などの低金利で借入れしている人は要注意です。当初固定の金利が低い場合は、固定期間終了後の金利条件は高くなっているケースが多いのです。
現在は、全期間固定金利での金利も低くなっているので、たとえ、現在の適用金利が高くなり、返済額が少し上がったとしても、残りの期間の金利を下げられるのであれば、総返済額は逆転する可能性もあります。
つまり、短期間の期間固定金利タイプの住宅ローンを利用している方は、固定期間の終了前に借り換えを検討する方が賢い選択なのです。

・年収が下がりそうなら、10月までに行動
住宅ローンの借換えの審査は、新規の住宅ローンのときと、ほとんど同じです。つまり、収入も大きな審査のポイント。
年収が減ったことで、借換えの審査がおりなくなってしまったというケースも多くあります。
会社員の場合、年収は前年の収入が基準となります。本審査の時には、最新の年収を証明する書類が必要となるので、今年の年収が下がりそうな場合には、10月ごろまでに借換えの手続きを行っておくのが賢い方法です。

・健康状態が良好なうちに借換えを
住宅ローン借入れにおいて、忘れがちなのが、健康状態です。ほとんどの金融機関では、借入れ要件の一つに、「団体信用生命保険に加入できること」を挙げているのです。
つまり、住宅ローンを広い選択肢の中から選ぶには、生命保険に加入できる健康状態であることが必要なのです。
健康な状態を維持できるかどうかの確証は、誰にもありません。年齢を重ねれば重ねるほど、そのリスクは大きくなります。
住宅ローンも、生命保険同様、健康なうちに見直ししておきましょう。


Ⅴ.住宅ローン借り換え、ここだけは注意

1.借り換え手数料に注意
 住宅ローンの借り換えで、一番気になるのは諸費用ではないでしょうか?せっかく金利が下がって、返済額が圧縮されるというときに、借換の手数料で数十万円も持って行かれては、なかなか借り換えに踏み切れないものです。

借り換えの事務手数料(保証料)
  ネット銀行 5万円~借入額の2.1%
  大手都市銀行 金利+0.2%
上記に加えて10万円~20万円の登記費用などが必要になります。最低5万円からの低予算で借り換えができるため、ネット銀行の住宅ローンに人気が集まっています。

2.固定金利から変動金利への借り換えは要注意
 固定金利タイプは変動金利タイプに比べて1%以上金利が高いのが普通です。もちろん、この変動金利の金利が続くのであれば、固定金利タイプから変動金利タイプへ借り換えしても、メリットは非常に大きくなるでしょう。しかし、変動金利はそのままこの低金利が続くとは到底思えないぐらい低水準なのです。
変動金利に借り換えをしても、10年後に金利が上昇していたら、固定金利のままの方が良かったとならないように、まずは同じ金利タイプでの借り換えを検討しましょう。
シミュレーションの削減額だけを頼りに、金利タイプを変更するのはお勧めできません。

3.借り換えは「今でしょ!!」
 住宅ローンの借り換えというものは、何回できるか?ご存知でしょうか。何度でもできるのです。もし、もう少し金利が下がってから借り換えをしようと考えているのであれば、今した方がいいのです。もちろん、金利がここからさらに下がる可能性もありますが、その時はもう一度借り換えをすればいいだけなのです。
今の段階でも削減メリットがあるのであれば、新規の住宅ローン借入とは違って、待つことに意味はありません。ただし、借り換え手数料は都度必要になるため、
それ以上に金利が下がらないと借り換えはできません。

4.借り換え時に保証料は戻ってこない。期待してはいけない。
 大手都市銀行の住宅ローンの場合、新規の借入時に保証料を金利上乗せタイプか、一括前払いタイプを選ぶことになります。基本的には、この保証料というのは、保証会社が返済不能時に代わりに銀行へ弁済するための費用なので、返済期間の途中段階で借り換えをする場合は戻ってくるはずのものなのです。
しかし、現状では銀行独自の計算方法というものにより、35年ローンで5年たっただけでも、50%の返還、10年で30%の返還、ほどしか戻ってこないのです。
保証料の返還を借り換え諸費用にあてようとしても、思い通りの額が戻ってこないケースが多いのです。
借り換えメリットの計算時には、保証料の変換をあてにせずに、自費で借り換え諸費用を出してもメリットがあるのかを考えましょう。

5.借り換え時に団信は切り替わります。介護特約や3代疾病特約付きの団信に切り替える
 借入した時よりも、今の生活状況やライフスタイルというのは変わっていることも多いでしょう。特に健康面での不安も年齢を重ねることによって増えてきているのではないでしょうか。人気のあるネット銀行の新生銀行や住信SBIネット銀行では、団信の保障を無料でさらに手厚くしているのです。
通常の団信は、死亡時のみに住宅ローンの返済が免除されるものですが、新生銀行の介護団信は要介護時に住宅ローン返済が免除されるもの、
住信SBIネット銀行の団信は、がん、心筋梗塞、脳卒中など8つの疾病で働けなくなった場合に住宅ローン返済が免除されるものです。
どちらも、無料なので、借り換えは金銭的メリット以外にも、保険的メリットで選ぶことも検討すべきなのです。

 以上のように、”借り換え”を上手く行えば削減効果は十分得られますが、金利変更時とこどもの教育費がかさむ時期が重なることのないよう、ライフプランと返済計画があっているか十分シュミレーションする必要があります。
人生の3大支出と言われる「教育費」・「住宅購入費」・「老後資金」はライフプランが基となります。ご自分のライフプランをしっかり計画し、安全・安心で豊かな生活を目指したいものです。

入野 泰爾  2015年08月10日