家を持つ

家庭経済の耳より情報

2017年06月10日

空き家問題から学ぶこと

 平成27年5月26日から完全施行された空き家対策特別措置法(空き家法)をご存知ですか。
数年前から、放置された空き家が老朽化し、倒壊の危険やゴミの臭気、不審者侵入など付近や周辺に悪影響を及ぼしている、と社会問題になりました。
しかしこのような空き家も憲法で財産権が保障されているため、行政が勝手に片付けたり、撤去することはできませんでした。
また、古いビルも老朽化による看板や外壁タイルの落下で歩行者に危害が及ぶようになり、問題になっています。

空き家は年々増加しており、平成25年には全国で820万戸あり、地方だけでなく、東京82万戸、神奈川県48万戸などとなっています。
空き家問題は田舎だけの問題ではありません。首都圏のマンションでも空き家が発生しているのです。マンションは区分所有法により規制されていますが、老朽化したマンションは空き家の解消が困難で、建て替えや除却もしにくいのです。
こうした現状は少子高齢化社会では、ますます増加することが予想されます。

 空き家が増加した原因の一つに、税制があげられます。空き家にしておくことで土地の固定資産税が更地より最大1/6まで優遇されていて、空き家の解体処分をしない風潮を助長していた面もあります。解体撤去すると撤去費用(坪単価:木造 2~3万円、鉄骨造り 3~4万円、鉄筋コンクリ―ト造り 4~5万円)のほか土地の固定資産税が毎年最大4.2倍に増えることになるわけです。家を撤去しても単に6倍になるわけではなく、更地の固定資産税は評価額の70%が課税標準額となるため、6ⅹ70%で4.2倍になります。
古家を解体して更地にすることで高く売却できる好立地の土地ならこうした問題は起こりません。

 空き家法は市町村が行う空き家対策に必要な調査・選別を行い、適切な管理を促進するため、所有者に情報の提供や助言、その他必要な援助を行う制度です。
特に対策が必要な特定空き家等に見なされると解体通告や強制対処等の措置が講じられることになります。

いきなり解体せよというのではなく、改善助言・指導→猶予期限→勧告(固定資産税の特例対象から除外)→猶予期限→改善命令(不服があれば意見書)→猶予期限→強制対処の対象→強制撤去(行政による代執行)となります。

 「空き家法なんて自分には関係ない」と思っている方はいませんか?

少子高齢化により、一人っ子同士の結婚で親の持ち家が2軒ある場合、相続して何らかの処分をしなければなりません。駅近の好立地の家なら、高く売却もできるでしょう。でも、遠い地方の家なら売却できないかもしれません。塩漬け不動産、負債になってしまいます。

また、自宅の将来がどうなるかを想像してください。現在の自宅は駅近にありますか。お子さんが将来住んでくれそうですか。高齢化した時に資産価値があれば、介護生活のリスクを担保することができます。

家を持たないという選択もあります。一生涯賃貸で過ごすこともあり、かもしれません。家を買う資金を老後資金にまわせます。
ただし、持ち家にしろ、賃貸にしろ高齢化した時にどういう住まい方をするかも考えておきましょう。
また、田舎暮らしを考えている方には空き家が格安で購入できます。
各自治体が移住促進のため、空き家バンクで物件情報を提供していますから、上手に利用すれば理想の「終の棲家」が得られるかもしれません。

今後、老齢年金の削減は避けられません。また、介護施設や介護者の不足で介護難民が大量に生まれ、在宅介護を余儀なくされる時代がやってきます。

これから家を購入しようと考えている人は、できるだけ資産価値の低下しない家を探しましょう。時間をかけて、じっくり検討することです。
駅近マンション、駅から徒歩圏内の一戸建て、空き家になっても貸家や売却できる家、リメークすれば賃貸できる家は資産価値を維持できます。
バリアフリー仕様も頭に入れておけば、子育てや高齢化にも対応できますよ。

 家族の増減に応じて住まい方、環境が変わります。増築、減築や家を買い替える必要もあるでしょう。いつでも売れる家は本当の資産です。
目先、新しくてきれいな新築に惑わされることなく、生涯のライフプランの中で住まい方、住居を選択しましょう。

大倉 和久 2017年06月10日