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家庭経済の耳より情報

2023年05月25日

AI(人工知能)と人類が共存する世の中はもうすぐです ~チャットGPTの人気から~

 1956年に研究者会議にてAI(人工知能)という言葉が誕生し、1966年に自然言語処理プログラム「ELIZA」が発表されましたが、当時のAIは人間が埋め込んだプログラムを稼働させることによりあるルールに基づいた会話をすることができた装置でした。
 現在のAIはまるで人間の赤ん坊のように独力で成長します。自分が経験したこと、人から教えられたことを吸収して短時間で大人に成長します。自分で学習して限界なく成長し、しかも寿命がありませんから、どんどんと記憶も能力も増え続けます。
 2000年代初頭にAI研究者であるカーツワイル博士がシンギュラリティ(特異点)は2045年頃に起こることを予測していました。シンギュラリティとはAIが人間の知能を超えることを意味しています。その時期は2045年よりも前倒ししそうな勢いです。

 現在話題になっている「チャットGPT」は、まさにシンギュラリティが近いことを思い出すきっかけになりました。チャットGPTはAIの分類では「生成AI」というカテゴリーに入ります。生成AIは文章、小説、詩、画像、絵画、イラスト、音楽、などを命令された条件で作成します。
 例えば、AIにレンブラントの筆のタッチで帽子をかぶった男性の油絵を描けと指示すると、油絵描画ロボットを使って、まるでレンブラントの作品と見紛う絵を描きます。
スペインのマラガ大学ではAIの作曲家「ラムス(Lamus)」を開発して、全く新しい楽曲をAIが作っています。
日本経済新聞社では上場企業が発表する決算データから「決算サマリー」の文章をAIが作成していることを公表しています。
 また、悪い例ですが、Twitterでは昨年夏に実際には起こっていない日本のある地域の水害状況がニュースとして投稿されました。これは生成AIで作られた写真でフェイクニュースでした。
この例から生成AIが作ったものが詐欺などの犯罪に使われることも容易に考えられます。
 日本のお家芸であるアニメも、日本の作風と同じような内容で画質も似たように作ることが可能ですので、日本で制作されたアニメと偽って海外で作られることも想像されます。
内閣官房 知的財産戦略推進事務局ではAI創作物は、思想又は感情を表現したものではないため著作物に該当せず著作権は発生しない、という見解を示しています。

 このように様々なことができる生成AI、中でもチャットGPTについては以下の様な利用法が検討されています。
政府・省庁では、国会答弁原稿の生成、自治体のマニュアルなどの作成のために。
大手企業では業務効率化のため各部門別に導入または導入検討中。
一般企業でもお客様向け案内文や報告書作成、生産性向上と業務プロセスの改善、ビジネスアイデア創出などで人員削減や配置転換を見込んでいます。
また、東大では学生がチャットGPTを裁判に使えるかどうかを実験しています。現在のレベルでは使えませんが、問題点が明確になってきているので、いずれは使えるようになるかもしれません。
 これらが実現されることにより、人間の働き方が変わり、ライフプランの変化も起こることが予想されますので、私たちもその対応を考えておく必要があります。
 チャットGPTは現在、個人情報保護、偽情報や差別的な文章を修正しなければならない点が指摘されていますが、例えば個人情報の定義とともに個人情報を許可なく利用してはいけないことをAIに覚えさせれば解決させられるのではないかと思います。人間の子供と同じようにAIに対して正しい躾をすれば正しく育つものです。
 5月末に行われたG7広島サミットでは生成AIの開発、利活用、規制について議論し、見解を年内にまとめる方針を決めたそうです。議論ではEUはプライバシー保護などには熱心なため、AIに関しても厳しい法律を作るという意見を出し、米国は技術的に進んでいるためIT業界の自主ルールを期待するという意見を、そして日本はAIの研究ではあまり進んでいないため法律ではない業界の自主規制を望むという見解を示し、一致を見なかったそうです。
 日本のDX政策はなかなか進まず、生徒全員にタブレットを配布するなど、物から入り断ち消えになることが多いので、世界の英知を集めて、もっと大きな観点でAIが人類の暮らしに有意義であるためには何をしていけば良いかを議論していただきたいと思います。本年末に決まる方針を待ちましょう。

 AIとしては既に多方面で実用化されており、人間の仕事が既に変化に差し掛かっています。
一例では、RPA(ロボットによる工程自動化)とAI-OCR(光学文字読取りとAIによる書類審査)を使ったシステムが、地方自治体では補助金申請の審査に、金融機関では住宅ローンや事業資金融資の審査に実用化されています。企業でも事務的な仕事は同様のシステムに替わりつつあります。
さらに生成AIがクリエイティブな仕事もできることを示しましたので、人間の仕事はさらに限定されていく方向です。
AIは24時間働くことができますし、残業手当なし、仕事が早い、疲れない、文句言わない、ということで業務効率化のためには欠かせないものになっています。
AI社員に負けずに、人間社員が仕事をしていくために何をすれば良いかを考える事が、これからの課題です。AIを排除することは人類の負けで、AIと共存するためにどうするかを真剣に考えなくてはなりません。

 最後に私が思う大きな事例をご紹介します。
イギリスのロボット研究者であるピーター・スコット-モーガン博士は、全身が動かなくなる難病ALSで余命2年を宣告されたことを機に、人類で初めて「AIと人類の融合」を決断し、サイボーグとして生きる未来を選びました。博士の頭脳はAIとして保存され、研究を続けることができたはずでしたが、残念ながら完成を待つことなく博士は昨年6月に亡くなられました。
これが実現できていたら、モーガン博士の頭脳の内容はAIというコンピューター頭脳であるメモリーと回路が覚えこみ、新しい情報を常にAIが学習し、意見を聴き、また述べることによりフィードバックされて新しい研究を続けることができたと思います。

AIと人類が共存する世の中はもうすぐです。

池 俊夫 2023年05月25日