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家庭経済の耳より情報

2025年01月25日

改正育児介護休業法の施行について

令和6年の通常国会で「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成三年法律第七十六号、以下「育児・介護休業法」という。)が改正され、同年5月31日に公布され、また、同年9月11日には、改正育児介護休業法に関連する省令が公布され、改定指針も公示されています。
今回は、改正育児介護休業法の概要についてお話していきたいと思います。

Ⅰ 改正項目

今回の改正では、次のとおり、育児に関連の項目と介護に関連の項目の両方が改正されています。

1 育児関連(施行日は、⑴~⑸は令和7年4月1日、⑹・⑺は令和7年10月1日です。)
⑴ 子の看護休暇の見直し
⑵ 所定外労働の制限の対象になる子の範囲の拡大
⑶ 300人超の企業に育児休業取得状況の公表の義務付け
⑷ 育児短時間勤務の代替措置の追加
⑸ 3歳未満の子を養育する労働者への在宅勤務等の措置の努力義務化
⑹ 個別の意向の聴取と配慮の義務付け
⑺ 柔軟な働き方を実現するための措置の義務付け

2 介護関連(※施行日は、何れも令和7年4月1日です。)
⑴ 介護休暇の見直し
⑵ 介護両立支援制度等の個別周知・意向確認の義務付け
⑶ 介護両立支援制度等の早期の情報提供の義務付け
⑷ 介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境整備の義務付け
⑸ 介護期の在宅勤務等の努力義務化

Ⅱ 育児関連の改正項目の概要

1 子の看護休暇の見直し
⑴ 対象となる子の年齢の拡大
「小学校就学始期に達するまでの子」から「9歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子(小学校第3学年終了前までの子)」に拡大されます。

⑵ 取得事由の拡大
これまでの取得事由(「傷病の子の世話」及び「子の予防接種と健康診断の受診」)に加えて、次の事由が追加されます。

①感染症予防のための学校の臨時休業
②感染症予防のための学校への出席停止
③保育所等その他の施設又は事業における①又は②に準ずる事由
④子の入園、卒園又は入学の式典その他これに準ずる式典

⑶ 労使協定により適用除外にできる労働者
「継続して雇用された期間が6ヶ月未満の労働者」の要件が廃止され、適用除外にできなくなりますので、勤続6ヶ月未満の労働者も子の看護等休暇を取得できるようになります。

⑷ 子の看護休暇の名称変更
子の看護休暇の取得事由拡大に伴い、「子の看護休暇等」に変更されます。

2 所定外労働の制限の対象になる子の範囲の拡大
対象となる子の範囲が「3歳に満たない子」から「小学校就学始期に達するまでの子」に拡大されます。

3 300人超の企業に育児休業取得状況の公表の義務付け
男性労働者の育児休業等の取得割合等を公表することが義務付けられている企業の規模が、1000人超から300人超に拡大されます。

4 育児短時間勤務の代替措置の追加
労使協定により育児短時間勤務の対象外とした労働者に対する代替処置(フレックスタイム制・時差出勤制度・保育施設の設置運営等)に「在宅勤務等」が追加されます。

5 3歳未満の子を養育する労働者への在宅勤務等の措置の努力義務化
小学校就学始期に達するまでの子を養育する労働者に対しては、育児目的の休暇制度を設けること等が事業主の努力義務とされていますが、3歳未満の子を養育する者で育児休業をしていない労働者に対しする措置として、「在宅勤務等」が事業主の努力義務として追加されます。

6 個別の意向の聴取と配慮の義務付け
労働者から本人又は配偶者の妊娠・出産等に関する申出があった場合、育児休業の制度や仕事と育児の両立支援制度にについて個別に周知し、意向を確認することが事業主には義務付けられていましたが、これに加えて、個別に意向聴取することが義務付けられ、意向聴取後は、その労働者の就業条件を定める際にその意向に配慮することが義務付けられます。

7 柔軟な働き方を実現するための措置の義務付け
新たに設けられた制度で、柔軟な働き方を活用しながらフルタイムで働くことが可能になるように、3歳以上で小学校就学始期に達するまでの子を養育する労働者が選択できる複数の措置を講ずることが事業主に義務付けられます。

⑴ 講ずるべき措置の内容
次の措置のうち、事業主は2つ以上の措置を講じる必要があり、労働者はそのうち1つを選択して利用できるようになります。
① 始業時刻の変更等
・フレックスタイム制
・始業又は終業の時刻を繰り上げ又は繰り下げる制度(時差出勤制度)
② 在宅勤務等
③ 育児短時間勤務
④ 新たな休暇の付与
⑤ 保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の提供

⑵ 労使協定で除外できる労働者
次の労働者については、労使協定を締結することにより、この措置の対象外とすることができます。

① 事業主に引き続き雇用された期間が1年に満たない者
② 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
③ 業務の性質又は業務の実施体制に照らして、1日未満の単位での休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する者(休暇が時間単位取得の場合に限る。)

Ⅲ 介護関連の改正項目の概要

1 介護休暇の見直し
介護休暇は、介護が必要な状況にある対象家族が1人の場合は年に5日まで、2人以上の場合は年に10日まで、対象家族の介護のための休暇を取得できるというものですが、労使協定により適用除外にできる労働者の要件が見直されて、「継続して雇用された期間が6ヶ月未満の労働者」の要件が廃止されます。

2 介護両立支援制度等の個別周知・意向確認の義務付け
対象家族の介護が必要な状況になったことを労働者が申し出た場合、介護休業に関する制度及び介護に関する両立支援制度等について個別に周知すること、及び介護休業及び介護両立支援制度等の利用に関する意向を確認することが事業主に義務付けられます。

⑴ 個別周知する事項
① 介護休業に関する制度
② 介護両立支援制度等
・介護休業に関する制度
・所定外労働の制限に関する制度
・時間外労働の制限に関する制度
・深夜業の制限に関する制度
・介護のための所定労働時間の短縮等の措置
③ 介護休業及び介護両立支援制度等の申出先
④ 介護休業給付金に関する事項

⑵ 個別周知・意向確認の方法
介護休業等の取得の意向確認の方法は労働者が妊娠・出産等を申し出た場合と同様で次のとおりとなります。(※③・④は労働者が希望した場合に限る。)

① 面談
② 書面の交付
③ FAXを利用しての送信
④ 電子メール等の送信(記録を出力して書面を作成できるものに限る。)

3 介護両立支援制度等の早期の情報提供の義務付け

個別周知・意向委確認とは別に、労働者が40歳に達した日の属する年度に達した場合は、その労働者に対して、介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等について情報提供することが事業主に義務付けられます。

⑴ 情報提供の時期
次の何れかの時期に情報提供することとされています。

①40歳に達した日の属する年度の初日から末日までの期間
②40歳に達した日の翌日から起算して1年以内

⑵ 情報提供する事項
情報提供する事項は、上記2の⑴と同じです。

⑶ 情報提供の方法
情報提供の方法は、上記2の⑵と同様ですが、「③FAXを利用しての送信」及び「④電子メール等の送信」については労働者の希望を条件としてないため、対象者に対して一律に③又は④の方法で情報提供することも可能になっています。

4 介護両立支援制度等を利用しやすい雇用環境整備の義務付け
介護休業及び介護両立支援制度等について、次の①から④の措置の何れかを講じることが事業主に義務付けられます。

①介護休業及び介護両立支援制度等に関する研修の実施
②介護休業及び介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口の設置等)
③介護休業の取得及び介護両立支援制度等の利用に関する事例の収集及び当該事例の提供
④介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等並びに介護休業の取得及び介護両立支援制度等の利用の促進に関する方針の周知

5 介護期の在宅勤務等の努力義務化
家族を介護する労働者に対しては、介護休業若しくは介護休暇に関する制度又は介護のための所定労働時間の短縮等の措置に準じて、介護を必要とする期間、回数等に配慮した必要な措置を講ずることが事業主の努力義務になっています。
これに加えて、要介護状態の家族を介護する労働者で介護休業をしていない者に対して、就業しながら介護をすることを容易にするため、「在宅勤務等」の措置を講ずることが事業主の努力義務となります。

中原 潔 2025年01月25日