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家庭経済の耳より情報

2015年11月20日

老後資金の準備は確定拠出年金(DC)が有利

 10月、日本経済新聞に「確定拠出、やらぬは損」サブタイトル「個人型、節税効果高く」の記事が掲載されました。確定拠出年金(以下DCという)は2001年に導入された老後資金の準備を目的とした制度です。「企業型」と「個人型」がありますが、「企業型」は会社が掛金を拠出し社員(加入員)が自分の判断・責任で資産運用する、ただし60歳前には取崩せない、まさに老後資金準備のための制度です。「個人型」は自営業者等が自分で掛け金を拠出します。
 国は平成16年に公的年金の給付減額を決めましたが、自己責任・自助努力を標榜し、個人が老後資金の準備を有効的にする制度としてDC法改正案を本年4月に国会へ上程しました。衆議院は通過しましたが、安保改定法案で紛糾したため参議院は通過できず、審議継続になりました。DC法改正案に大きな反対はないため次の国会では通過し、2016年には施行されると思われます。今回は皆様に関係の深い点をご紹介したいと思います。

 大きな改正点は個人でDCに加入できる人が大幅に広がる点です。従来加入できるのは個人事業主等(第1号被保険者)と企業年金のない会社に勤務する従業員(第2号被保険者)のみでした。専業主婦(第3号被保険者)と給与所得者(第2号被保険者)のうち共済加入者(公務員や教職員)や企業年金を導入した会社の従業員は個人型に加入できませんでした。これらの人がすべて個人型に加入できるようになり、日本国民でDC個人型に加入できない人は原則的にいなくなりました。
 DC「個人型」は
 ①掛金が所得控除の対象になります(小規模企業掛金等控除)
 ②運用収益が非課税になります(20%の源泉徴収なし)
 ③給付時、一時金には退職所得控除が適用され、年金には公的年金等控除が適用されます
 これほど税務上優遇された準備手段はないでしょう。これを活用しない手はないですね。

 例えば年収600万円の会社員が夫婦で1万円ずつDC加入した場合を考えてみましょう。年間24万円の所得控除が認められます、所得税・住民税が概算15%とすると税金が約4万円減ります。30歳から30年間なら120万円の節税になります。また、30年間の積立額は720万円ですが、仮に2%の運用利率を確保したとすると985万円となり、運用収益265万円の20%~53万円の税金を支払わなくて済みます。合わせると173万円、大きな節税効果ですね。運用方法等について今回は省略しますが、長期分散投資をすれば4%の運用実績を確保することも夢ではありません。

 それでは加入できる上限金額はいくらでしょうか。様々なケースで違いますので、よく確認してください。
 DC法改正案で新たに加入できる人
  専業主婦(第3号被保険者)  :23,000円(月)、年276,000円
  共済加入者(第2号被保険者) :12,000円(月)、年144,000円
  厚生年金加入者(第2号被保険者)
  ・企業年金加入者(DCのみ) :20,000円(月)、年240,000円**
  ・企業年金加入者(DBのみ*):12,000円(月)、年144,000円
  ・企業年金加入者(DC+DB):12,000円(月)、年144,000円**
 従来から加入できる人 
  自営業者等(第1号被保険者):68,000円、年816,000円
  ・国民年金基金制度との合算とする
 厚生年金加入者(第2号被保険者)
  ・企業年金非加入者:23,000円(月)、年276,000円
 DC導入済みの会社はDC規約で個人型の導入を規定しなければいけません。また会社がマッチング拠出を実施し、すでに個人が拠出できる制度を導入している場合もあります。この機会に良く確かめましょう。
 掛金額は家計の状況に応じて変えることができます。法改正案には拠出限度額の「年単位化」が盛り込まれ、ボーナスの活用等弾力的な活用が可能となります。有効的な制度ですから配偶者を含めて良く検討することが大切です。

 *DBとは確定給付年金の略、給付額が確定している制度。運用金利の変動により掛金額が変動しても
  会社が負担する制度である。
**DCには会社が拠出する掛金の上限額が決められているが、会社が個人型導入を認可する場合、会社
  の上限額は従来の拠出上限額から個人型分が減額される

仁科 眞雄 2015年11月20日