保険を見直す

家庭経済の耳より情報

2012年11月10日

医療保険は不要?必要性を平均入院日数から考える

 新聞・雑誌を読んでいると、医療保険の必要性に疑問を投げかける記事を見かけることが増えています。医療保険の主な保障は、入院すると1日あたり5,000円や10,000円といった定額を給付してくれるという内容です。必要性に疑問を持つ人の主な理由は、入院期間が短くなってきていること、高額療養費制度により医療費の自己負担額は多くないこと、この2つにほぼ集約できると思われますが、本当に医療保険は必要ないのでしょうか。

 主な理由の1つである、入院期間の短縮化について確認してみましょう。
入院患者の平均入院日数は次のように推移しています。
1984年:40.9日
1987年:44.0日
1990年:44.9日
1993年:41.9日
1996年:40.8日
1999年:39.3日
2002年:37.9日
2005年:37.5日
2008年:35.6日

 1993年以降、入院日数は減少方向に思えますが、この24年間の推移を見る限り、そのスピードは急速とは言えないようです。それでは、平均入院日数が長い脳血管疾患と、治療の中心が入院から通院に移りつつあるがん、そして老後に増加する骨折について、平均入院日数の推移を確認してみます。

脳血管疾患      がん(悪性新生物)  骨折 
1996年:119.1日   1996年:46.0日   1996年:46.1日
1999年:110.1日   1999年:40.1日   1999年:45.2日
2002年:102.1日   2002年:35.7日   2002年:43.7日
2005年:101.7日   2005年:29.6日   2005年:47.2日
2008年:104.7日   2008年:23.9日   2008年:43.2日
出所:厚生労働省「平成20年患者調査」

 脳血管疾患では2005年は増加に転じるなど停滞状況にあるように見えます。骨折も同様です。一方、がんでは1996年から2008年の12年間で平均入院日数がほぼ半減しました。がんは入院保障が有効でなくなりつつあるのは明白ですが、他の主な疾患を調べたところ、がんほど急速に入院日数が減少している疾患は見当たりませんでした。

 全体として、入院期間の短縮化は、医療保険の入院保障を否定するところまでは進んでいないと私は考えています。一方、がんについては医療保険では対応できなくなりつつあり、がんへの経済的な対応は医療保険以外で考えておく必要があると言えそうです。

平野 雅章  2012年11月10日